笑いを堪えながら二人を見送ると、誰かに頭をガッと掴まれた。



「うぁ!?」

「俺らも帰るぞ」



見上げると、そこにいるのは無表情であたしを見下ろす那央。

うぅ……頭ポンポンという萌え仕草じゃなく思いっきり掴まれたし、なんか無表情が逆に怖い。

心は駆け足を始めてるけど、今は逃げられそうにない。



「あ、あの、逃げないんで離していただけますか……?」

「やっぱり逃げてたのか、今まで」

「はぅ」



あたしのばかー。

さらに冷たさを増した那央の表情にビクビクしていると、彼は一つため息を吐いて歩き出す。

どうやら、あたしの自転車が停めてある駐輪場に向かうらしい。

バツが悪くなって、肩をすぼめながら那央の後ろをついていくと。



「……何で避けるんだよ?」



振り返りもしないまま、那央が寂しそうに問い掛けた。

力無いその声に、罪悪感が沸き上がる。



「ごめん……」

「そんなに嫌か、俺が」

「違う! そんなんじゃなくて──!」



むしろ好きだからだよ

……と、心の中では言えるけれど、ロックが掛かったように声には出来ない。