──ドキン!と鳴る胸は、まるで警告音。

何故か逃げたくなっちゃうんだ。



「いやっ、だ、大丈夫、全然熱なんてないから! あはは、じゃね!」

「あ、おい縁……!」



弾かれたように那央の手から飛び退くと、一目散に駆け出していた。

あーもう、絶対不自然だったよね。

何で普通にしていられないんだろう……!




「それが恋なんだってば」



逃げ出したあたしは、舞花がいる茶道部の部室に来てしまった。

当日着る浴衣を用意していた舞花は、あたしの話を聞くなりしたり顔で言う。



「恋に落ちると自分をコントロール出来なくなるものなんだよ。もういい加減自覚したでしょ?」

「ハイ、舞花さんのおっしゃる通りで……」



正座するあたしを他の茶道部員が奇妙な目で見つめる中、舞花は人差し指をあたしにビシッと向ける。



「でも逃げるのはダメ! また変な誤解されるよ」

「だよね……」



わかってはいるんだけど、身体が勝手に動いちゃうんですよ……。

恋って、本当に厄介だ。