ハッとして目が覚めた。
寝る時と少しずれている布団を直してから上半身を起こす。
「っんああ〜!めっちゃ寝たー!」
腕を限界まで伸ばして右、左と体を倒す。
最後にもう一度ベッドに体を沈めて伸びをすれば今日の体の完成だ。
「あ・・・私、今日誕生日」
昨夜はあんなに上機嫌だったのにいざその日が来ると、意外と呆気ないものだった。
15歳の私、さようなら。
16歳の私、こんにちは。
気分一新、ベッドから飛び降りて着地する。
机の上の愛用している櫛を乱雑に取って丁寧に髪を梳かす。
最低限の身だしなみを整えてリビングへ向かおうとドアに近づく。
「あーっと、今何時?」
そこまでいって時間を確認していないことに気付き、百均で買った壁掛け時計を見る。
9時14分。
学校が休みとは言え、少し寝過ぎたな。
まあいいや、とあまり深く考えずに今度こそ部屋を出る。
「ママー、お腹減ったー」
部屋のドアを閉めながら、別に減った訳じゃ無いけど朝の決まり文句として、最愛のママへ声を掛ける。
ドアのバタン、という音と共に"玲奈の部屋"と書かれた安物のネームプレートがカラン、と音を立てた。
味噌汁の温かい匂いがフワリ、匂って鼻を擽る。
さっすがママ。
朝一番に好きな味噌汁が飲めるなんて。
昨夜のウキウキがだんだんと戻ってきて階段を弾みながら下りる。
16歳になった私の人生はすごく輝いて見える。
これぞ、誕生日マジック。
曇りガラスのついたドアを開けて中で寛いでいるであろう家族に声を掛ける。
「おっは・・・よー・・・」
「おっ、起きたか、ちび」
パパが私を愛称で呼んでくるが私の耳はその声を流してしまったため聞こえなかった。
その理由はここにある。
「・・・お前、おせーな」
「なっ、んで、ここに・・・!?」
驚きを隠さないまま、私が問いかけたパパと向かい合って座っている幼馴染。
ーー加藤陸斗、その人だった。
「何で・・・!?」
「お前、聞いてねえのかよ」
溜息を吐きながら椅子から立ち上がって近づいてくる。
それにただならぬ雰囲気を感じ取ってじり、と後ずさる。
「・・・おい」
「あ、いや、別に深い意味は無いよ?」
私が後ずさったことに眉を顰めるがすぐに真剣に顔を引き締めた。
少なからず、動揺を覚える。
こんな陸斗、知らない。
「そこからでいいからよく聞け」
有無を言わせない静かな声に首をこくこくと振る。
「玲奈」
「は、い!?」
「誕生日おめでとう」
「え」
まさか陸斗の口からお祝いの言葉が出るなんて思わなかったから呆気に取られてしまう。
そして陸斗の顔が真剣すぎておめでとう、なんて顔じゃないから何事か。
もう一歩、じり、と足を動かす。
その間にも陸斗は湖の水面を思わせるような、静かな視線を寄越していた。
「ちょっとちぃ!陸斗君の前でそんな格好恥ずかしいでしょ」
そんなママの言葉に背中を押されるようにして後ろ手に再びドアを開ける。
リビングを出て音を立てないようにしてドアを閉めた。
「いやいやいや、ありえない」
あの陸斗がおめでとう?
しかも私に?
陸斗は昔から常に無感情だった。
私より年上ということもあるけど、とにかく子供らしくない子供だった。
ましてや、人の誕生日を祝うような人ではなかったはずだ。
・・・ああ、ダメだ。
「着替え・・・」
フリーズしそうな頭を無理矢理振って支度しようと階段に足を掛ける。
るんるん気分で下りた時とは大違いだ。
取り敢えず、着替え。
話はそれから、うん。
寝る時と少しずれている布団を直してから上半身を起こす。
「っんああ〜!めっちゃ寝たー!」
腕を限界まで伸ばして右、左と体を倒す。
最後にもう一度ベッドに体を沈めて伸びをすれば今日の体の完成だ。
「あ・・・私、今日誕生日」
昨夜はあんなに上機嫌だったのにいざその日が来ると、意外と呆気ないものだった。
15歳の私、さようなら。
16歳の私、こんにちは。
気分一新、ベッドから飛び降りて着地する。
机の上の愛用している櫛を乱雑に取って丁寧に髪を梳かす。
最低限の身だしなみを整えてリビングへ向かおうとドアに近づく。
「あーっと、今何時?」
そこまでいって時間を確認していないことに気付き、百均で買った壁掛け時計を見る。
9時14分。
学校が休みとは言え、少し寝過ぎたな。
まあいいや、とあまり深く考えずに今度こそ部屋を出る。
「ママー、お腹減ったー」
部屋のドアを閉めながら、別に減った訳じゃ無いけど朝の決まり文句として、最愛のママへ声を掛ける。
ドアのバタン、という音と共に"玲奈の部屋"と書かれた安物のネームプレートがカラン、と音を立てた。
味噌汁の温かい匂いがフワリ、匂って鼻を擽る。
さっすがママ。
朝一番に好きな味噌汁が飲めるなんて。
昨夜のウキウキがだんだんと戻ってきて階段を弾みながら下りる。
16歳になった私の人生はすごく輝いて見える。
これぞ、誕生日マジック。
曇りガラスのついたドアを開けて中で寛いでいるであろう家族に声を掛ける。
「おっは・・・よー・・・」
「おっ、起きたか、ちび」
パパが私を愛称で呼んでくるが私の耳はその声を流してしまったため聞こえなかった。
その理由はここにある。
「・・・お前、おせーな」
「なっ、んで、ここに・・・!?」
驚きを隠さないまま、私が問いかけたパパと向かい合って座っている幼馴染。
ーー加藤陸斗、その人だった。
「何で・・・!?」
「お前、聞いてねえのかよ」
溜息を吐きながら椅子から立ち上がって近づいてくる。
それにただならぬ雰囲気を感じ取ってじり、と後ずさる。
「・・・おい」
「あ、いや、別に深い意味は無いよ?」
私が後ずさったことに眉を顰めるがすぐに真剣に顔を引き締めた。
少なからず、動揺を覚える。
こんな陸斗、知らない。
「そこからでいいからよく聞け」
有無を言わせない静かな声に首をこくこくと振る。
「玲奈」
「は、い!?」
「誕生日おめでとう」
「え」
まさか陸斗の口からお祝いの言葉が出るなんて思わなかったから呆気に取られてしまう。
そして陸斗の顔が真剣すぎておめでとう、なんて顔じゃないから何事か。
もう一歩、じり、と足を動かす。
その間にも陸斗は湖の水面を思わせるような、静かな視線を寄越していた。
「ちょっとちぃ!陸斗君の前でそんな格好恥ずかしいでしょ」
そんなママの言葉に背中を押されるようにして後ろ手に再びドアを開ける。
リビングを出て音を立てないようにしてドアを閉めた。
「いやいやいや、ありえない」
あの陸斗がおめでとう?
しかも私に?
陸斗は昔から常に無感情だった。
私より年上ということもあるけど、とにかく子供らしくない子供だった。
ましてや、人の誕生日を祝うような人ではなかったはずだ。
・・・ああ、ダメだ。
「着替え・・・」
フリーズしそうな頭を無理矢理振って支度しようと階段に足を掛ける。
るんるん気分で下りた時とは大違いだ。
取り敢えず、着替え。
話はそれから、うん。