「なに勘違いしてんだ、あいつ」
「え…」
あぁ、私と智兄が一緒にいたから、か。
ただの幼馴染みなのに。
前に、ほかのひとに見られたこともあったんだけど、そのときは、"あのぼっちの子が先生と××な関係!?"
みたいな噂になった。
幸い、私の噂なんか、すぐになくなったけど。
智兄は、廊下に出ていったかと思うと、先輩を
引きずって戻ってきた。
「なんだよー、いちゃいちゃしてっからだろー!」
…いちゃいちゃ…って…。
「いーから、プリント出せ!評価下げっからな!」
「うぉ、やめて!」
怖いなぁ、智兄。
私の時はもっと待って……、くれなかったか。
生徒には平等らしい。
「ここ、空白だけど?」
「わかんねーもん」
「…」
「いだいいだい!」
でた。智兄の頭グリグリ攻撃。
ツボに見事に入るから、すごい痛いんだよね、あれ。
「智…こほん、先生、やめなよ」
「しょーがねぇな」
ぱっと、先輩の頭から手を離したと思ったら、今度は首の後ろを掴んだ。
そのまま、持ち上げて、私が座っていた椅子に
おろした。
「みっちり教えてやる」
こ、こわっ、智兄…
「いーじゃん、テストはちゃんと受けてるぞ!」
「提出物出さないと単位とれないかもな」
「…せんせー、ここ教えてー」
せ、先輩、単純…。
私は、お邪魔だよね
。
ささ、と移動してドアの前に立つ。
気づかれないようにドアノブをひねった…はずなのに、
「梓、どこいくんだよ。ここで食ってきゃいいだろ」
「いいの?」
「あぁ。コイツは女がいたほうがはかどる」
「人をチャラ男みたいに言うな」
でも、イスがないんだよね。


