混乱になってる私から、そっと唇を離す矢崎。





「…謝らないから」



「え?」




「さっきみたいに、俺だけを意識しろよ」






 矢崎の言葉が、胸に響いた。ドキッ、って確かになった。



 そのときの矢崎の表情が、脳裏に焼き付けられる。




 切なそうだけど、苦しそうで

 傷ついてそうで、でも真っ直ぐで

 辛そうに見えるけど、…私の心を揺らす表情。







「好きなんだよ」







 二度目の「好き」を合図に、また矢崎は私にキスを落とした。



 私は抵抗せずに、目を閉じてそれを受け入れた。



 自分から求めるように、角度を変えて甘いキスをする。


 まるで自分の気持ちを矢崎で埋まるように。遥陽のことを忘れられるように。