「…茜……」
窓越しに聞こえた結月のか細い声に、私はそっと微笑んだ。
「お客様、お次のゴンドラでよろしいですか?」
「はい」
「ではどうぞ」
もう来ていた次のゴンドラに、私は矢崎の手を引っ張りながら入る。
未だ状況が理解できていない矢崎は、私の顔をじっと見る。
「なんでさっきのに乗らなかったんだよ」
「なんでって……はぁ。察しなよ」
勘鋭いときと鋭くないときがあるんだね、矢崎って。
私が遥陽のことを好きってことには、気づいてたのに。
「結月と遥陽を二人きりにさせるためにしたの」
「え、そうなん。いきなり立ち止まったから具合悪くなったのかと思った…」
…え?



