「結月に頼まれたから」…とは言えない。




「なんとなく、かな」



「なんだそれ」




 ハハッと目を細めて笑う遥陽。


 私は誤魔化すように、微笑んだ。





「最後に、ひとつ。
 ――今、恋してて幸せ?」





 私はね、幸せじゃない。


 親友と好きな人が同じなんて、幸せなわけがない。



 だからせめて、親友と好きな人には幸せになってもらいたい。




 叶うかわからない、私の純粋な願い事…。





「幸せか幸せじゃないかっつったら、幸せじゃねぇな。
 でも、幸せになりたいとは思ってる」




 遥陽は頭に手を回して、「ま、片思いだしな。…付き合えたらいいけど」と小さく呟いた。






「好きな人が俺じゃない別の人と付き合ってたら…、奪いたくなるけど」


 切なそうにポツリと落とした遥陽の声は、突然吹いた冷たい風の音にかき消され、私は拾えなかった。