鼻をすする音が聞こえ、やっぱり泣いてるんだなと私は遥陽の大人びた背中を見て思った。
「けどさ、やっぱり大好きな奴には幸せになってもらいたいんだよ」
遥陽は、優しいね。
自分のことより他人の幸せを願ってさ。
……あー、涙が溢れちゃう。
心がじーんと震えて、瞳が揺れる。
私もね、遥陽には幸せになってもらいたい。
もちろん結月も、矢崎にも。
私は不幸でも構わないから、皆は幸せになってほしい。
心の底から、そう思えるんだ。
「だから、幼馴染に戻って、今度こそ茜を幸せにしてあげたいんだ」
「……遥陽…」
ビューと音をたてて吹いた風が、私の髪をさらう。
冷たい風が、私の涙をもさらっていった。
ねぇ、遥陽。私たちの恋はさ、たくさんの涙と悩みとすれ違いばかりだったよね。



