廊下を歩きながら、俺は思い出していた。


 新川に恋をした、あの日のことを。




 思い出しながら、さっき新川の手と触れた自分の手を見つめる。






「……やっぱり」


 新川のことが好きな気持ちは、止められない。






 ギュッと手を握りしめる。


 まださっき触れたときの熱さが残ってる。



 …止めなきゃいけねぇのに、

 消さなきゃいけねぇのに、




 どうしても、ダメだ。






 会いたくなかった。


 会ってしまったら、





 「気持ちを消そう」「新川のことを忘れよう」、そう考えることさえもやめてしまうから。

 自分の心を素直に受け止め、二人に「おめでとう」ともう一度「幸せになれよ」と一生言えなくなるから。






 好きだから、…大好きだから、会いたくなかったのに。