――キーンコーンカーンコーン




「あ、予鈴だ。戻ろ?」


「うん」



 昼休み終わりのチャイムが、校内に響き渡る。


 その音を聞いて、私たちはお弁当を片付けて屋上から出た。




 出るときに吹いた風が、いやに冷たく感じた。






「ねぇ、茜」


 教室に入る寸前、結月が真剣な顔でこう言った。




「あたし、眞田くんの彼女になりたい…」




 扉に手をかけたまま開かず、私は固まった。


 どうして今…それを…?



 胸にナイフが刺さって張り裂けたみたいに、痛い…。




「釣り合うような女に、なりたい」



 続けて言った結月は、前へ進んで私の代わりに扉を開けた。



 まるで、私の気持ちを知ってるみたいに。

 幼馴染という“友達”として一番近いこの距離よりも、結月は一歩ずつ遥陽に近づいていくみたいに。




 そのときの結月を、私は初めて恐れた――。