仕事の合間をぬって、昼間家に帰ってきた母さんに無理矢理強引に浴衣を着せられた。


『……は?男が浴衣?え〜…恥ずいんだけど』

『え〜つまんない子ねぇ〜。いいじゃない、デートなんでしょ?』


デパートのセールで安かったからと、母さんが男もんの浴衣を勝手に買ってきたらしい。


嫌だと言ってるのに、「風馬も恥ずかしがって着てくれなかったのよー。ユキは着てよ!せっかく買ってきたのに!」と本当に強引に着せられた。


『わぁ♪やっぱり男の子の浴衣ってかっこいい〜♪写メ撮らせて!』


俺が浴衣姿でダルそうに立ち、早く仕事いけよ、サボってんじゃねぇよと文句タラタラなのに反し、母さんはお構いなしにパシャパシャと写真を撮りまくる。


『…優花ちゃんにも見せてあげたかったわねぇ。ユキ、似合ってるじゃない』


母さんは満足そうに腰に手を置いて言った。



俺より先に祭りへと出かけていった優花。

器用に母さんの浴衣を着て、出かけていった。…多分、いや絶対アイツと一緒。


浴衣姿の優花は後姿しかわからなかったけど、多分、いや絶対可愛いんだろうな…。


それを成宮が独り占めするなんて……


透子という彼女がいながらも、こんなに胸がモヤモヤする。


そんな透子に後ろめたさを感じる。


俺なんかまだ……優花のこと好きなのに……

それを透子だってわかっているのに……


こんな気持ちのまま、本当に透子と付き合ってていいんだろうか。