「……あたしは大丈夫。一人で帰れるから、ユキちゃんは部活戻って…」
お願いだから、もうこれ以上優しくしないで。
もうこれ以上……
あたしに、触れないで……。
「……でも」
「……じゃあね、ユキちゃん」
あたしは彼の目を見ず…見れないまま、歩き出した。
もう……こんなにも好きになって諦めなきゃいけないことに、涙が出そうになる。
好きになりそうな時に『お兄ちゃん』なんだからって…もうその時から諦めようとしたのに……。
……もう……
気持ちは、戻れないことわかってるのに……。
「……あの人……もしかして、ケーゴパパの再婚相手の息子とか?」
学校から少し離れてから、あたしに着いてきていた成宮くんが訊く。
「……うん」
「……すっげぇ勘なんだけど…もしかして、優花ちゃん……あの人のこと、好きなの?」
「……そ、そんなんじゃないよ…」
うまく嘘がつけなくて、早歩きになったあたしの前に、成宮くんが通せんぼする。
ビックリして立ち止まり、彼を見上げると、彼は真剣な表情であたしを見ていた。
「………嘘つき」
「……う、嘘じゃない。……だって、ユキちゃんは……「……『兄妹』だもんね?」
言いかけた言葉を代わりに成宮くんがハッキリと言葉にした。
認めなきゃいけない、認めたくない言葉。
だから、余計成宮くんの言葉が心にトゲのように刺さった。
「………今の優花ちゃん、辛そう。……俺が力になれない……?」
やっぱり、成宮くんは変わった。
それとも……
あたしが弱くなったのだろうか。
「………俺が、アイツのこと…忘れさせてやるよ」
手のひらには、まだユキちゃんの温もりが残っていた。
抱きしめられた時の香りだって、
抱きしめられた時の腕の強さだって…
目を閉じれば、すぐにあたしは思い出せる。
それをあたしは忘れることができるのだろうか……。
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