「彼、倒れていて」



「あらそうなの?貧血かしらね?」




 私の肩から彼を離し、ベッドに運んでくれる先生。



 ひょっこりと、彼を覗く。





 顔が見えないほどの長い前髪。


 ぼさぼさの黒髪。



 同じく顔を隠す大きな黒縁眼鏡。



 やけに汚れた制服。



 ・・・さっき、蹴られた跡かな?





「彼どうしたの?」


「わ、わかりません。
2号館の廊下に倒れていて」



「そうなの・・・」




 言えない。


 彼がカツアゲされていたなんて。