「僕、前にノートに小説を書いていたんです。
ただ、それがお義父さんにばれてしまいまして・・・。
今は書いていないんですけど、また書いてみたいなと思っています・・・」



「諦めちゃ駄目だよ優斗くん。
書きたいなら書けば良いじゃない」



「僕だってそうしたいですよ。
でも・・・・」



 今にも消えそうな声で話し終えると、優斗くんは頼んでいたアイスコーヒーを飲んだ。



「それに、僕にはやるべきことがあるんです」



「やるべきこと?」




「僕、高校を卒業したら大学に進学して、教師の資格を取ります。
そしていずれは、お義父さんの跡を継ぎます」



「良いの?そんな人生でも」



「はい。それは僕自身の意思です。

僕は仕事人間のお義父さんを見てきました。
継ぐのは僕が水門になった時から言われていました。
だから、お義父さんの仕事ぶりを見ていたんです。

お義父さんは確かに立派な人です。
ですけど、生徒のためにはなりません。
僕はお義父さんのような出来る大人になります。
でも、それは生徒のために出来る大人になりたいんです」



 優斗くん、凄く大人な意見だな・・・。



「日下さんは将来の夢とか決まっているんですか?」


「私?私は将来、小説家になりたいと思っているよ。
でも、それだけじゃ食べていけないだろうから、保健の先生になろうかなって思っているよ」



「保健の先生?意外ですね。
理由はなんですか?」