「・・・日下さん?」




 人混みから聞こえる、優しい声。


 すると目の前から、人が近づいてきた。




 少し整えられた、黒い髪。


 女の子の私が羨む、小さな顔。


 そんな小顔に似合わない、大きな眼鏡。



 すらりとした手足。





 間違えることは、ない。



「優斗くん!」


「え?何で下の名前・・・って、ぅわ!」




 無我夢中で走って行き、思い切り抱きついた。


 バランスを崩しそうになった優斗くんだけど、倒れないよう支えてくれた。



「ど、どうしたんですか・・・そんなに泣いて。
って、学校どうしたんですか?」



「優斗くんの馬鹿あ・・・。
う・・・うわああああぁぁぁぁあああん!!」




 優斗くんの質問や周囲の視線を無視した私は。


 子どものように、思い切り泣きじゃくった。