信号が赤になり、車が停まると、運転席の方からハンカチが渡された。


「ありがとうございます・・・」


「その涙、是非優斗様にお見せください。
優斗様、この間幸菜様の家に向かい、帰ってきたときの表情は凄く哀しそうでしたから」


「哀しそうだった・・・?」



「はい。
その日は何も召し上がらず、まっすぐとお部屋に向かってしまわれ、出てきませんでした。
何があったかはわたくしは存じませんが、幸菜様ならご存知なのでは?」


「わ、私っ・・・!」



 私はこの間の出来事を新葉さんに伝えた。



「そうでしたか、そんなことが・・・。
ですから幸菜様は倒れそうになるまで走っていたのでございますね。

ご安心くださいませ幸菜様。
きっと優斗様は誰よりも幸菜様のことが好きです。

自分の意思を持たず、誰かに反抗することのない大人しい優斗様がそんなことを言うなんて、驚きでございます。
優斗様を変えてくださり、ありがとうございます」



「いえ・・・私は何も」



「・・・着きますよ、幸菜様」



「あ、本当だ!ありがとうございます!!」



 私は戻った体力を一気に使い始める。






 探さなくちゃ!


 何も始まらないから。