馬鹿、私。


 こんなこと言ったら、水門くんのこと苦しめるのに。


 馬鹿すぎるよ・・・私・・・。




「・・・良いですよ」


「え?」



「僕で良ければ、教えます」



「えっ・・・良いよ!
悪いもん!」



「僕は大丈夫ですから」



 にこっと優しく笑う水門くん。



「悪いからって言う必要はありません。
僕が日下さんに教えたいんです」



「でも・・・。
我が儘言わないでって、言われるもん」



「誰にですか?」



「・・・小さい頃から、言われてきたの。
私の願い事は出来る限り叶えるから、我が儘言わないでって」



「小さい頃、ということは、ご両親にですか?」



「そう。
私の両親ね、私が小さい頃から忙しくて、いつも仕事仕事で。
私のことは後回し。
たまに会えば、凄く優しいの。
そして、私の欲しい物を何でも買ってくれるの。

でも、家族でどこかに出掛けたことはないの。
でも、物は買ってくれるから。
我が儘言わないでねって」