俺から離れて会話を続ける幸菜に気づかれないよう近づき、耳を澄ませる。


 会話が聞こえてきた。



「え?勇子(ゆうこ)が?
本当ですか?それ」


 ・・・勇子?


 クラスの女に、勇子はいない。


 勇子って、誰だ・・・?






 俺は、1人だけ勇子がいることに気が付いた。


 もしかして、“あの”勇子か?


 でもどうして幸菜が勇子を?


 幸菜は女だから、勇子を知っているのは納得できる。


 ・・・にしても、勇子がどうしたんだ?





「えっ・・・?
そんな・・・!
信じられないです!
どうしましょう・・・灯さん・・・!」



 灯さん?


 灯さんは知らない。



「ユキを守らないと!
今日学校終わったら、行きますね!
・・・え?良いんですか?
・・・わかりました。

じゃあ、家にいますね。
灯さんの好きなチョコレートも用意しておきます」