でも勇都くんの目は、いつも通り、黒く染まっている。


 光なんて、一切差し込まない、黒だけの瞳。



「勇都くんっ・・・離して!」


「幸菜・・・覚えてろ。
今後一切、本気で幸菜のことが好きかとか聞くな。
今度言ったら、ここから幸菜を落とすぞ」



 本気で聞こえるよ・・・。



「いやっ・・・私、まだ死にたくない!」


「じゃあ二度と言うな」



「言いません!だからお願い!離して!!」



 どんどん視界が揺れて行く。


 このまま行くと、泣くぞ私。


 勇都くんの前でも泣きたくないよっ・・・。





 勇都くんは私を掴んでいた手を離すと、後ろを向いた。



「俺はもう少しここにいる。
幸菜は好きにしろ」



「はいっ・・・」




 帰ってもいいはずなのに。




 何故か私は、





 その場を離れることが




 出来なかった・・・。