「前髪、上げてくれない?駄目かな?」


「いや・・・駄目じゃ、ないんですけど」


「駄目じゃないなら良いかな?
お願い!私見てみたいの」



 そんなにお願いされたら、断れないよ・・・。



「あ、あんまりマジマジ見ないでくださいね」


「勿論!
今度見せてなんて言わない。
今日だけで十分にするから!」



 恥ずかしいけど・・・まぁ良いか。


 日下さんなら、大丈夫かな?


 ・・・なんの自信があるんだか。







 僕はゆっくりと、前髪を上げた。


 前髪を上げた姿で日下さんを見るのは初めてだ。


 前髪を上げたのも、久しぶりだ。




「・・・・」



 日下さんは、眼鏡越しに僕のことを見る。



「は、恥ずかしいです・・・」



 ・・・ヘタレだなぁ、自分。