吐き捨てるように言う並木さんに、カァッと血が上る。


「先輩はだらし無くも情けなくもない!何も知らないくせに先輩を悪く言わないでっ‼︎」

「何も知らないのはお前だろ?何も見ようとしない、現実を見るのが怖くて逃げてるだけの馬鹿な女なんだよ、お前は」


ひどいっ…ひどいひどいっ‼︎

悔しくて、拳をギュッときつく握る。


「あの男はな、お前とカフェに来る前に何度か彼女と店に来てんだ。彼女がわざわざ俺を席に呼んで、パンケーキが凄い美味いって言ってくれたからよく覚えてる。だけどそのあとすぐ、お前とあの男が一緒にいたからあの彼女とは別れたんだと思ってたんだがな」


嘘よ…

だって先輩、オアシス・カフェに来るの初めてだけど珈琲もパンケーキも美味いなって…
あの日そうやって言ってたもん。


「俺とお前がレジで話してるのにヤキモチ妬いて、ガキだけど学生ならそんなもんかって微笑ましくも思ったが。違うな。あの男はそんな純じゃない。一人の女に満足出来なくて、独占欲が強い。彼女と会えない時に暇潰しに遊べる従順な女が欲しかっただけだよ」


並木さんの言葉が鈍器にかわり後頭部を殴打してくる。

頭が、脳が、麻痺して。

“暇潰しの従順な女”

その言葉だけが頭をぐるぐると廻る。