「瀬奈ー!終わった?」

「これ運んだら行くからもう少し待ってて!」


瀬奈はお盆にパンケーキを乗せ、すっかりウェイターになりきって笑顔で接客をしていた。


瀬奈、凄いな…
私は接客業は恥ずかしくて出来ないから、今回は調理係になったけど。

白いシャツに深緑の腰巻エプロン姿が凄くお洒落で、本当のカフェ店員のようで少し憧れる。

ちなみに、あのエプロンはウェイターの子達が自分で縫ったみたい。


「なかなかいい店じゃん」

「うわっ!並木さん!」


突然、背後から聞こえた声に心臓が飛び上がった。


調理室から出て、やっと並木さんを頭の中から完璧に消し去れそうだったのに。

思わぬ登場に、心臓が早鐘を打ち始める。


ゔう…
何なの、この心臓は!
なんで並木さん相手にこんなドキドキしてんのよ…


目をギュッと強く瞑り、自分の心臓に「止まれ止まれ」と言い聞かせる。

だけど、なかなか鼓動は収まらなくて。


それを収めたのは、一生会いたくなかった人物ーー。



「トシー!オアシス・カフェ監修のパンケーキ屋だって!」




先輩の彼女、美緒さんだった。