私が振り返ると、先輩はホッとしたような笑みを浮かべて私の元へ駆け寄ってくる。

そして、目の前で足を止めると、今度は切なげに顔を歪めた。


「電話したのに」

「…ごめんなさい。気付かなくて」


いつもなら先輩に会えて嬉しいのに、今日はそれよりも気まずさの方が上回っていて目を合わせられない。

先輩も、気のせいか緊張してるような感じがする。


数秒の沈黙が、やけに重苦しい。


「話があるんだ。ちょっと時間いいかな?」


嫌な予感が頭を過る。

駄目、今はまだ話したくない。
何にも聞きたくない…‼︎


「あ、あの。今日はちょっと…」

「少しでいい。10分、いや5分!駄目かな…?」

「……」

「もう俺のこと、嫌い?」


今にも泣きそうな先輩に、胸がズクンッと疼く。

そんなこと言われたら、嫌だなんて言えないじゃない。
だって私は、先輩が大好きで大好きで仕方ないんだから…