『トシ、電話?誰?』

『あ、ああ…大学の友達だよ』

『もしかして、同じサークルの遠藤君?なら、挨拶しなくっちゃ』

『挨拶なんていいよ。言ったろ?あいつシャイだって』

『いいじゃない、少しぐらい。エンドーさーん!トシがいつもお世話になってまーす!』

『お、おい。だからいいって。ごめん、また今度連絡するから』


そこで電話は一方的に切れた。


私を先輩の友達だと思い込んで、電話の向こう側にいる浮気相手に挨拶をする彼女。

多分、彼女は先輩が耳に当ててる携帯に顔を寄せて、電話の相手に聞こえるように大きな声で話したんだろう。


顔を寄せるだなんて…
想像しただけで、嫌だ。

先輩に近付かないで…
先輩に触らないで……


それに、先輩の声、凄く優しかった。
彼女に対してはあんな優しい声で、穏やかに話すんだ。

私、先輩の大学のことなんて聞いたことないし…

サークルの話とか、友達の遠藤君がシャイで先輩と仲が良いとか。
そんなの全く知らない。