そうだ、もしかしたら何かあったのかもしれない。


「…探しに行こう」


もうここでジッと待ってなんかいられない。

公園を出ようと駆け出した、その時。
鞄の中で、先輩専用の着信音が鳴り出した。

すぐに鞄から携帯を取り出し、通話ボタンを押す。


「もしもし⁉︎先輩⁉︎」

『…あ、恵里奈ちゃん?俺だけど…』

「どうしたんですか⁉︎何かあったんですか⁉︎」

『いや…その……』


珍しく歯切れの悪い先輩に、胸がざわつき始める。


もしかして……

先輩、また私を裏切るのーーーー?




次に聞こえて来た言葉は、私の視界を真っ暗にさせた。



『ーートシ、電話?誰?』






気が付くと、サラリーマンやOLで賑わう繁華街を行く当てもなくトボトボと歩いていた。

周りはうるさいはずなのに、全く耳に入ってこない。

聞こえるのは…
耳に残っているのは…


“トシ”


先輩をそう呼ぶ、可愛らしい彼女の声だけ。