「え⁈あ…」


まさかここで私に話かけるとは思わなくて派手に動揺してしまった。

嫌な緊張でドクドクと重苦しく心臓が鳴る。


誰かに見られて怪しまれたりでもしたら…

不安と焦りが押し寄せ、恐る恐る周りを見渡す。
だけど、特に怪しんでそうな人は見当たらなくて、ホッと息をついた。


そもそも先輩は片付けを頼んでるだけで、悪いことをしてるわけでもなく。
たまたま近くにいた私に声を掛けただけで、動揺する必要なんかないのに。



「はい……わかりました」


先輩から折り畳み椅子を受け取ると、私達は体育倉庫に向かった。

先輩は人通りが全くないプールと体育館の裏の方へ歩いて行く。


「先輩、こっちからだと遠回りですよ?」

「いいから。着いておいで」


振り向いた先輩があまりにも優しく微笑むもんだから、私はそれから何も言えなくて大人しく先輩の後ろを着いて行った。