「さっきの、勝手にベラベラ喋らないで下さい!」


橘君にも、もちろん他の通行人にも聞こえないように声を落として話す。

私の言葉に、並木さんは面白いものを見つけた悪ガキみたいに、意地悪そうに微笑んだ。


「なんで?昨日の男、彼氏なんだろ?別に問題ねぇじゃん」

「なんでって…私にも色々あるんです‼︎」


問題大有りだよ…
先輩は彼氏じゃないし。
私と先輩は誰にも秘密の関係なんだから。


「ふ〜ん……訳ありってことか」


急に真面目な顔をして、私の心を探るような眼差しを向けてくる並木さんから、バッと目を逸らす。


“訳あり”

確かにその通りなんだけど、初めて他人から言われて胸が痛んだ。
背徳感からか、真っ正面から目を合わせられない。


バクバクと、心臓が重苦しく音を鳴らす。

最低な奴、とか思われてるんだろうか。
この後何を言われるのか怖くて、目をギュッと瞑った。

すると、


「ま、俺には関係ないし興味もないけど」