「店はどう?順調?」

「まぁ、普通だな」

「嘘。行列の出来る人気カフェのくせに」


京子はくすっと笑うと、すぐ表情に影を落とした。

長い間一緒にいたんだ。
無理して笑ってることぐらい、一目瞭然でわかる。


「そっちは?日本一号店任されてんだろ?」

「ん?ああ…順調よ。予定通り来月にはオープン出来るわ。うちのチョコレートは本当に絶品なのよ!」


商品の話や、店のパティシエの話をする京子は本当に楽しそうで、昔夢を追いかけていた頃のかっこいい京子の姿を思い出した。

恐らく、悩みは仕事の事じゃないんだろう。


「ねぇ、剛」


しばらく仕事の話をすると、京子はやや冷めたコーヒーを口に含んで一度息を吐いた。


「あの子のこと、本気なの?」


これが多分、俺を呼び出した本題。
真っ直ぐ俺を見据える京子の瞳があまりにも真剣で、どことなく寂しそうで目を逸らせない。


「ああ、本気だ」