「何で疑問系?」

「だ、だって…そんな急に、恥ずかしすぎます」


恥ずかしいってただ彼氏の名前を呼ぶだけで、その辺のカップルは普通にやっていることだと思うけど。

恵里奈には少しハードルが高かったか。


「お前もいつか並木になるんだし、早く慣れておけよ」

「え…それってどういう…」

「さぁな。その時が来たら、今度はちゃんと言ってやるよ」


赤くなる恵里奈にわざとリップ音を響かせてキスを落とした。


“その時”まで、まだまだ時間はかかるだろう。

高校卒業して、大学か専門学校に行って、好きな職について。
もしかしたら、その時俺は30後半かもしれない。

きっと職場には、若くて仕事が出来る男がたくさんいる。

だけど、それでも恵里奈は俺を選ぶ。

俺だけに、溺れさせてやるから。


覚悟しとけよ?



「ほら、行くぞ」


手を繋ぎ、砂浜を歩く。
海は穏やかで、月の光が反射してダイヤモンドのように輝いていた。

綺麗、と呟く恵里奈。
いつか、この海よりも綺麗な指輪をプレゼントするから。

ゆっくりと俺たちのペースで進んで行こうな。