恵里奈も慌てて車を降りると、俺の一歩後ろを歩く。


本当は隣りを歩きたい。
手を繋いで、同じ目線でありたい。

だけど、決意したとはいえ戸惑ってしまう。

結局、俺が恵里奈といたいって思っても、恵里奈がそう思っていなかったら…
俺の過去と未来が重いと感じていたら…

俺は耐えられるだろうか。

夜の真っ暗な海が、さっきまでの強気な俺の気持ちを掻っ攫っていくようで恵里奈の隣りを歩くのが怖い。

こんなこと、初めてだ。


キシキシと鳴く白い砂浜。
ザザァーッと引いては押し寄せる波。

悴んだ手にはぁーっと息を吹きかける恵里奈の声。


俺は一度深呼吸をすると、立ち止まり恵里奈を振り返った。

ビクッと肩を揺らす恵里奈に、ズキっと胸が痛む。


きっと恵里奈も不安なんだ。
だけど、ごめんな。

俺は、どんなにお前が俺から離れたがっても、離してやることは出来ない。


「恵里奈。俺の過去の話を聞いてくれるか?」

「…うん」


本当は、話さない方がいいのかもしれない。

でも、恵里奈には俺の全てを知っていてほしい。


俺がお前に出会って、どれだけ救われたかを…