顔を真っ赤に染めて反論する健。
それを楽しむお母さん。
まぁまぁ、と宥める恵里奈。

さっきまでピリッとしていた空気が、いつの間にか和やかムードになり、三人を見てるとヤキモキしていた自分が馬鹿らしく感じてくる。


「はあぁぁ…っ」

「な、並木さん…⁈」


緊張やら不安やらで硬くなってた身体から一気に力が抜け、盛大にため息を吐くと、恵里奈が俺の顔を覗き込んだ。


黒い澄み切った瞳に俺が映り、何度も味わいたくなるほど柔らかい唇が俺をもう一度呼ぶ。

恵里奈のキョトンとした間抜けな表情を見ていると、アホみたいな勘違いだったけど、嫉妬するのも悪くないなって思う。

だってそうだろ?
改めて、恵里奈という存在の大きさと
大切さを実感して。
13歳も離れた女と付き合っていく覚悟を再認識したんだ。



「行くぞ」


お母さんに一度頭を下げると、恵里奈の手を取り助手席に乗せる。

自分も運転席に乗り込むと、行ってらっしゃい、と手を振るお母さんに襟を掴まれた健がジタバタもがいてる様子がバックミラーに映った。

あいつ、正真正銘のシスコンだな…

将来、結婚の許しをもらいに来る時、お父さんよりも健を納得させることの方が厄介かもしれない。