「まぁ…そうですけど」


二人を見てると、たまに羨ましくなる。
同じ目線で、同じ立ち位置で。


「お前はいいな…若くてよ」

「喧嘩したんすか?」

「別に、そんなんじゃねぇよ」

「ふ〜ん。ま、どうでもいいですけど。また、俺達を使うのはやめて下さいよ」


そういや、まだ付き合う前にこいつらに世話になってたんだっけ。

じゃ、と片手を上げて、卓人はカフェの方へ歩いていく。

まさか大の女嫌いのあいつが、あそこまで女に溺れるとは、誰が想像出来ただろうか。
何が起こるかわかんねぇな、と卓人の背中を見ていると、突然「そういや」と言って振り返った。


「電車ん中から見ましたよ、彼女」

「は?どこで?」

「裏の公園の辺りでーー」


俺は卓人が言い終わる前に走り出した。

卓人が、「男と一緒にいた」と言い掛けたことも知らずに。