『まぁ、後はあれだ。悪いことはしてなくても、警察と話してたら時間掛かるだろ?面倒だしな。もう、こんな時間だし』


トントンと腕時計を指で叩くと、恵里奈はハッと目を丸く見開いた。


『今何時ですか⁉︎』

『19時半だけど』

『うわ!今日は早く帰ってくるように言われてたんだった…私、これで失礼します!今日は本当にありがとうございました』


勢いよく頭を下げると、走り出そうとする恵里奈を『おいっ!』と引き止める。


『送るから待てって』


多分、こいつの最寄り駅はここだと思うが、俺が適当に走ってきたせいで遠くなってしまったかもしれない。
暗い住宅街を一人で帰らせるなんて出来ないし、車なら当然歩きよりも早く家に送ってやれる。


『いえ、そこまでご迷惑は掛けられません。それに、うちすぐそこなんで大丈夫です』

『え?すぐそこ?』

『はい。走ったら数分なんで!それじゃあ、失礼します!』


恵里奈は再度頭を下げると、背を向けて走って行ってしまった。