「乗れ」


今日一番の低い声に、ビクッと肩を揺らす。


言われるがままに助手席に乗り込むと、並木さんは乱暴に助手席のドアを閉め、自分も運転席に座った。

車は勢い良く走り出し、来た道を戻る。

車内は始終無言で、ピリッとした空気が立ち込めていた。


どうしよう…
我が儘を言ったせいで怒らせちゃったのかも。

気まずいまま、強制的に家に帰らされちゃうのかな。

こんな終わり方、嫌だよ…


ちらっと並木さんを盗み見る。

眉間に皺を寄せたままハンドルを握る並木さんの姿に、再び涙が出そうになって、慌てて視線を窓の外に移した。


数十分後、車はカフェの裏の駐車スペースに滑り込んだ。