「立てるか?」


並木さんの心配そうな優しい声が涙腺を刺激する。

もう限界で、ぽたっと涙が一粒こぼれ落ちた。


「っっ、お前…何泣いて…」

「帰りたく…ない…」

「は?」

「ごめん、なさっ……彼女がいるの、は…知って……だけど、まだ一緒に……いたいっ」


ヒックヒック、と嗚咽が漏れる。
ここが外だとか、周りの目があるとか、そんなこと考えられない。

止めどなく流れる涙は、頬を伝い、そして握り締めたペットボトルを濡らしていく。


「ちょっと来いっ!」


俯いたままの私の手首を掴むと、並木さんは私を強引に引っ張って早足で歩き出した。


驚きで涙はピタッと止まる。

私の前を歩く並木さんの広い背中を見つめながら、その後ろをついていくしか出来ない。


並木さんは遊園地を出ると、歩く速度を落とすことなくそのまま駐車場に向かった。

そして、停めてある車の近くになると、歩きながら鍵を取り出しセンサーで開錠した。