持っていたペットボトルをミシッと音がするぐらい強く握り締める。

今ここで泣いたら、並木さんに迷惑を掛けてしまう。

それに、並木さんには見られたくない。


必死に込み上げる涙を飲み込んでいると、


「どうした?まだ具合悪い?」


いつの間にか電話を切っていた並木さんが、俯いた私の頭にぽんっと手を置いた。


並木さんの体温が、優しさが、胸を刺して痛い。


好き…
この体温も、低い声も、大きな手も。

全部が好きなのに…

この人は私のものじゃない。

私の知らない女性の、大切な人なんだ。


「もういい時間だな。お前も具合悪いことだし、そろそろ帰るか」


そう言って、並木さんが立ち上がった。


帰りたく…ない。
もう少し一緒にいたい。

彼女さん、ごめんなさい。
今日を最後に、諦める努力をしますから…

どうかもう少しだけ、時間を下さい…