先輩の肩に手を置き、頭を上げるように軽く揺らす。

だけど、先輩は一向に反応しない。


すると、並木さんが先輩の肩に置いた私の手を掴むと、私を強引に引っ張って自分の斜め後ろに追いやった。

そして、相変わらず低い声で、頭を下げたままの先輩に向かって口を開く。


「今度こいつを泣かせるようなことがあったら、俺が許さねえから」


その言葉に、ドキンッと胸が跳ね上がる。

数パーセントだった期待がどんどん膨れ上がっていく。


「…約束します」

「それと、彼女もな?」

「はいっ!もう泣かせません、絶対に」


顔を上げた先輩からは誠意が伝わってくる。
先輩も心の迷いがスッキリしたようで、それが凄く嬉しかった。


先輩の返答にふっ、と笑った並木さんは、何か思い出したかのように、「あっ」と声を上げた。


「それと、こいつ俺が貰うから」


並木さんがさらっと言った言葉に、その場の空気がピタッと止まる。


な、並木さん……今、なんて…?

私からは並木さんの顔は見えない。
先輩は目を丸く見開き、驚きで言葉が出ない様子だった。