大丈夫だろうか。

笑顔、引きつってないかな?
先輩、もう気にしてないかな?


先輩の表情を、ちらっと盗み見ようとすると。


『ぷっ、あはははは』


突然、大きな口を開けて笑い出す先輩。
ぽかんと空いた口が塞がらない。

こんなに爆笑する先輩、初めて見た…


『屁の河童って…まさか望月さんからそんな言葉出てくるとは思わなかったから』


嬉しかった。

先輩が私の前だけで笑ってくれてること。

この眩しい笑顔を独占してること。

先輩の視界に私が映ったこと。

この時間だけは、私のもので。
私しか知らない先輩の時間が存在すること。


もっと、もっともっと、先輩を好きになった。

私の、初恋。



□■□


鞄の中に手を入れて、ある思い出の物を取り出す。

ボールが当たったあの日の放課後、先輩が奢ってくれた缶のアイスミルクティー。

先輩から貰ったそれは、甘くて、恋の味がした。


あれから、昼休みになると購買の自販機で同じアイスミルクティーを買うのが、私の日課になった。