途端に近くなる距離。
後頭部から感じる先輩の温もり。

よく考えると、静かな保健室で先輩と二人っきり。


ヤバイ、これは駄目なやつだ!

先輩に聞こえてしまいそうなほど高鳴る心臓。
意識しないようにしても、そうすればするほど意識してしまう。


『あ、あのぉ』

『あー…ちょっと腫れてるな』


先輩が氷水が入ったアイスバックを後頭部に当て直した。


『ホント、ごめん。女の子を傷物にするなんてな…』


しゅんっ、と怒られた子犬のようにひどく落ち込む先輩。

不謹慎にも可愛いと思ってしまう。


『俺、何でもするから言って?』

『えっ⁉︎そんなっ、大丈夫です‼︎』

『それじゃ俺の気が済まないんだけど』

『私、こう見えて凄く丈夫なんです。風邪は小学生の頃から引いてないし、これぐらい屁の河童ですよ!』


先輩が気にしないように、なるべく明るく振る舞う。

本当は先輩と二人っきりというこの空間。
緊張して余裕なんかなくて、笑顔なんて作れっこないんだけど。