「話はそれだけです。仕事中にすみまーー」

『お前、今何処にいるんだ?』

「え?何処って…学校ですけど」

『ふ〜ん。あっそ』


あっそ、って聞いといてそれだけ?
なんて、口に出しては言えず。


「じゃあ、もう約束の時間なんでこれで…あの、またカフェに並木さんのパンケーキ食べに行ってもいいですか?」


学園祭は終わった。
私と並木さんの繋がりはない。

約束が欲しかった。
また並木さんに会える、そんな望みが欲しかった。


『…いつでもどうぞ』


微かにだけど、不確かだけど。
並木さんが、ふっ、って少しだけ笑った気がする。

それだけで、嬉しくて心が震えた。



電話を切ると、一度大きく深呼吸をする。


「よしっ」


行こう、大好きだった人の元へ。

前に進むために。