「平井さんに並木さんの連絡先を教えてもらいました。勝手にすみません」

『…あいつら』

「あの二人は悪くありません。私のためを思って、私が勝手に」

『で?何の用?今、仕事中なんだけど』


迷惑だ、と言わんばかりに冷たい声の並木さん。

胸がズキッと痛む。


「先日は失礼なことを言ってすみませんでした」

『……』

「これから、先輩と話してきます。並木さんの言った通り、私は現実を見るのが怖くて逃げてるだけの馬鹿な女でした」

『……』

「もう終わりにしてきます。自分を…自分の気持ちを大切にします」


電話越しに、フゥーっと煙草の煙を吐くのがわかる。

私の話なんてどうだっていいって言われてるみたいで、胸の痛みが増す。


「ありがとうございました。並木さんのお陰で決心出来たので、どうしてもお礼が言いたくて」


お礼もそうだけど、本当は先輩と話す前にどうしても並木さんの声が聞きたかった。

先輩に何を言われても、私の決心が鈍らないように。

また道を踏み外さないように。