ちらっと並木さんを盗み見ると、もう私のことなんて全く気にもとめてない様子で、心がずしんっと重くなる。

とてもじゃないけど、この沈んだ気持ちのまま並木さんと対面の席になんて座れない。

せっかく平井さんが気を遣ってくれたんだけど…


「ごめんなさい…今日は待ち合わせしてるので、デーブルでもいいですか?」


今日は美緒さんも来る。
並木さんになるべく話を聞かれたくないし、出来るだけカウンターから遠い席がいい。


「出来ればあっちの窓際の席がいいんですけど」

「そうだったんですね。失礼しました。では、こちらへどうぞ」


一瞬、平井さんが見せた残念そうな表情に気付かない振りをして、案内してくれる彼女の後ろをついていく。

なるべく並木さんを視界に入れないように。


案内してくれた席は、店の一番端のテーブル席で窓側はソファ、通路側は椅子の2人掛けになっている。

周りに他のお客さんはいない。

私はカウンターに背を向けられる椅子に座ると、対面する窓の外へ目を向けた。