でも、先輩の“一番”に、私のような浮気相手が嫌だとは言えず。

電話があった日から店に入るまで、並木さんが休みであることを祈り続けた。


だけど、その願いは店の扉を開けた瞬間、見事に打ち砕かれることになる。


何しに来たんだよ、とでも言いたそうな眼差しでじとっと見られると、直様視線を逸らされた。


胸に矢が刺さったようにズキズキと痛む。

今すぐここから逃げ出したい。
これ以上、並木さんに嫌われたくない。

唇をぎゅっと噛み締めて、溢れ出そうな涙を飲み込んだ。


「恵里奈さん、また来て下さったんですね?」


私に気付いた平井さんは、そう言って近寄って来るなり「カウンターどうぞ」と席に座るよう促した。

平井さんが勧めてくれたのは、カウンター内で作業をする並木さんの対面の席。

彼女は多分、私達が何とか仲直り出来るように敢えてそこの席を勧めてくれたんだと思う。