今すぐ並木さんが作った甘くてふわふわのパンケーキが食べたい。

優しい味がするあれを食べたら、きっとこのざわつく心も落ち着く。

でも、今はそんな空気じゃないことぐらい、能天気で馬鹿な私にだってわかる。



「急に電話してごめんなさい」


うさぎのラテアートが描かれたカフェラテを一口飲むと、美緒さんが口を開いた。


先輩の彼女、美緒さんから電話が来たのは二日前。

平井さんと槙村さんと別れた後、家路を歩いている時に知らない番号から着信があった。

不思議に思いながらも出てみると、受話口から聞こえたのは彼女のひどく不安そうな声で、


『望月恵里奈さん…ですか?』


一瞬で美緒さんだとわかった。


胸の中は一気に罪悪感でいっぱいになって、心臓が破裂してしまいそうだった。

会うことを了承し、日時と場所を指定したのは美緒さん。


正直、此処だけは嫌だった。

先輩との思い出もあるからってこともあるけど、それよりも此処には並木さんがいる。

こんな修羅場を見せたくない。