「でも、並木さんって凄く優しい人なんですよ?」

「わかります。私、何度かその優しさに助けられたんです。凄く不器用なんですよね」

「ふふふ。そうですね」


柔らかそうな白い頬をほんわり赤く染めた平井さんに嫉妬心が芽生える。


もしかして、平井さんも並木さんのことが好きなの…?

そんな私の胸の内に気付いたのか、平井さんは「あ!違う違う」と両手を振って 否定した。


「私の彼も最初は不器用で分かりづらかったなぁって思って」


幸せそうに彼の話をする平井さんが凄く可愛くて羨ましいと思った。

堂々と好きな人の話が出来る。
負い目もなく、彼の全てが彼女のもので。


私もそんな“普通の恋”がしたい。

二番目じゃなく、一番になりたい。


だけど、先輩と私の関係では叶えられないのが現実。


何を夢見て、今のままでいいだなんて思ったのか。

そろそろ夢から覚めないといけない。
いつまでも夢心地ではいられないから。