気持ちが焦ってか、思わず歩く速度も速くなってしまう。

メインストリートを抜け、路地を曲がろうとした時。


「っっ、」


震えた携帯の画面を見て息を飲んだ。

表示されてるのは、先輩の名前と番号。

学園祭の前までは、その名前を見る度に躍ってた心も今は嘘のように沈んでいる。


一度深く深呼吸をすると、通話ボタンを押した。


「…もしもし」

『恵里奈?俺だけど』


三日振りの先輩の声は、彼女に話し掛ける声とは全然違う。
申し訳なさそうな沈んだ声色で、これから言われることを考えると言葉が続かない。


『…学園祭のパンケーキ、美味しかったよ。凄い繁盛してたな』


先輩も必死に言葉を探してるものの、気まずさが隠せていない様子。


『……ごめん‼︎』

「っっ、謝らないで…下さい」


謝られると虚しくなるから…


『でも、恵里奈のこと傷付けた』


謝るぐらいなら、傷付けたと悔やむぐらいなら、どうして彼女と一緒に学園祭に来たの?