【創side】

「ねっ、創ちゃんどう思う? どうしたら山梨先輩がその気になるかな」

 俺に鼻先を付き合わせ、質問を浴びせる礼奈。目の前に迫る愛らしい唇に、俺はもうその気だ。

「簡単だよ。その女子マネージャーが告白すれば、幼なじみじゃなくて女性として意識するさ。俺達みたいにな」

「うふ、でも告白は難しいんだよね。だって部内恋愛禁止だから」

 俺は礼奈の唇に触れたくて、口を尖らせるがあと数ミリ届きそうで届かない。この状況なのに、礼奈は平然と話を続ける。

「二人とも、素直じゃないの」

 ていうか、山梨は礼奈が好きだから、マネージャーに目がいかなくて当然だ。

「山梨が礼奈に失恋すれば、自然と他の女子に目が向くよ」

「私、『交際している人がいます』って断言したよ」

「それだけじゃ信じてないかも。俺と一緒にいるところを山梨に見せようか」

「創ちゃんと一緒にいるところ?」

「俺達が山梨の目の前でイチャイチャすれば、礼奈の言葉も信じるし、諦めもつくんじゃない?」

「それはちょっと……。恥ずかしいもん」

「俺とイチャイチャするのが、恥ずかしい?」

 中学生の頃は、公衆の面前でも平気で俺を誘惑してきたのに、恥ずかしがるなんて、礼奈が大人になった証拠だな。

 でもそれはそれで、ちょっと寂しい。

 俺は礼奈の耳にチュウーッとキスをする。

「うはあっ」

 嬉しそうに笑った礼奈。
 山梨にイチャイチャを見せつけると言っても、流石にキスは出来ない。

「二人で手を繋いで歩いてれば、鈍感なやつでも諦めるさ」

「……そうだよね」

 ◇

 翌週、俺は計画を実行するために、フローラ大学附属高校付近を彷徨く。まるで女子高生を狙う不審者だ。

 校庭ではサッカー部の女子マネージャーがコートの掃除をしている。俺は先回りして駅前で待機した。

 ゾロゾロと下校する生徒。そろそろ部活を終えた礼奈が、駅に来る時間だ。

 フローラ大学附属高校の生徒が駅前を行き交う。暫くして数名の男女のグループが駅に来た。

 女子の中にいても、礼奈の可愛さは際立っている。あんなに着たがっていただけあって、制服も誰よりも似合っている。

 そのグループにいた数名の男子。どいつが噂の山梨なのか俺にはわからないが、その中にイケメンがいるのは確かだ。

「創ちゃん」

「颯ちゃん!?」

 礼奈の呼びかけに、俺よりも礼奈の隣にいた女子が過剰反応した。

 ショートヘアの美人。
 彼女が噂のマネージャーかな。