「私、鈴木先輩の恋のキューピッドになりますから」

「はあ?わけのわかんないこと言ってないで、サッカーの試合を見ながらルールの勉強でもしなさい」

「赤、青、黄色のカードを上げて信号機みたいですね。私も上げてみたいな。楽しそう」

「……っ、青はない!旗揚げゲームじゃないんだから。レッドカードは退場なんだかから、楽しくないの」

「そうでした。えへっ」

 鈴木先輩にも山梨先輩にも、創ちゃんのことを話したら、ちょっとスッキリした。

 鈴木先輩に誤解されたくなかったし、本心から二人を応援したいと思っている。

 鈴木先輩みたいな可愛い女子が目の前にいるのに、全然気付かないなんて男子って本当に鈍感だな。

 練習試合を終えた部員に、私達はスポーツ飲料水とタオルを手渡す。

「南、俺にもちょうだい」

「鈴木先輩、山梨先輩のタオルをお願いします」

「はい、颯」

 山梨先輩はちょっと不満そうだったけど、鈴木先輩はちょっと嬉しそうだった。

「あれ、何かフワフワしてる」

 タオルで汗を拭きながら、山梨先輩は鈴木先輩に視線を向けた。鈴木先輩が一生懸命洗ってるタオルだよ。

 もちろん柔軟剤で仕上げているけど、愛情もたっぷり注入してあるんだからね。

「礼奈、どうしたの?一人でニヤケちゃって。例のラブレター、差出人わかったの?」

「あれはもういいの。私には創ちゃんがいるもん」

「颯ちゃん!?山梨先輩といつの間に……?」

「やだ、誤解しないでね」

 恋のキューピッドは、これから訪れる夏に向けてめちゃめちゃ忙しくなりそうだ。