【礼奈side】

 翌日、私はモヤモヤした気持のまま登校する。昨日は創ちゃんもお兄ちゃんも不機嫌で、ラブレターの差出人捜しに躍起になっている。

 学生鞄の中にはブルーの封筒。
 私も差出人が誰か知りたくて、学校に持参した。

「おはよう南」

「おはよう、桐生君。あの……ね、桐生君、もしかして私に手紙くれた?」

「手紙? 俺が? どんな手紙?」

 この様子では、差出人は桐生君ではなさそうだ。

「何でもない。今のことは忘れて」

「何だよ、気になるだろう。もしかしてラブレターを貰ったとか?」

「ち、ち、違うよ」

 どうしてバレたのかな。
 ラブレターだなんて、一言も言ってないのに。

「おはよう、南」

 後ろから声を掛けられ、振り向くと山梨先輩と一橋先輩だった。

「先輩、おはようございます」

 桐生君は私の前に飛び出し、二人の先輩に問い質す。

「山梨先輩、一橋先輩、南にラブレターを出しましたか?」

「きゃあ、桐生君、やめて。先輩、何でもないの。気にしないで下さいね」

 山梨先輩と一橋先輩は、互いに顔を見合せた。

「南にラブレター?そんなの出さないよ。一橋、お前抜けがけした?」

「山梨、お前こそ怪しい」

 二人の先輩は、何故か口論を始めた。

「桐生君、先輩が私にラブレターを出すわけないよ。だって先輩は私のことなんてこれっぽっちも好きじゃないし。先輩に失礼だよ」

「南、誰もそんなこと言ってないよ」

「へっ?」

 山梨先輩の言葉に、私はポカンと口を開けマヌケな声を出す。