女子更衣室でジャージに着替え、私達はグラウンドに向かう。女子マネージャーの先輩に色々と教わりながら、部活の準備をする。

「マネージャーって、体力も忍耐もいるのよ。安易な気持ちでマネージャーになると、必ず数日で辞めちゃうわ。好きな男子やカッコイイ男子がいるからとか、そんな理由ならNGだからね」

「下心なんて全然ありません!」

 百合野の入部は下心アリアリなのに、鈴木先輩に嘘を吐いた。

「鈴木、新人マネージャーには優しくしろよ。他にマネージャーのなり手はないし、貴重な人材なんだからな」

「颯《そう》は女子に甘いんだから」

 颯と呼ばれたのは、山梨先輩だ。創ちゃんと同じ呼び名に、ますますドキッとした。

「お蝶、部活で名前を呼び捨てにするな」

「そっちこそ、お蝶だなんて呼ばないで」

 山梨先輩に「あっかんべー」と舌を出す鈴木先輩は、無邪気で可愛い。

「あっ、南。誤解しないで。お蝶と俺は幼なじみで親友なんだ。変な関係じゃないから」

「変な関係って、どんな関係よ。颯はね、幼稚園までオネショしてたんだよ。それに整理整頓もできないし。爽やかなイケメンの振りしてるけど、意外とだらしないんだ」

「それは幼稚園の時だろ。お蝶こそ、男勝りで男子トイレ使ってたくせに。いつか自分は男子になれると思ってたんだから」

「煩い、煩い。それも幼稚園の頃の話でしょう。早くランニングしなさい」

 まるで子供の喧嘩だね。
 でも二人とも楽しそう。仲がいい証拠だ。

 山梨先輩は他の部員と一緒に、グラウンドをランニングした。その様子を見つめる鈴木先輩の眼差しは、さっきまでの眼差しとは異なり、女子の目をしている。

 その優しい眼差しに、すぐにピンときたんだ。

 鈴木先輩は、もしかして……?

「あっ、誤解しないでね。私と颯……、山梨君はあくまでも幼なじみだから」

「はい、山梨先輩の子供の頃の秘密をもっと教えて下さい」

 百合野の言葉に、鈴木先輩はちょっと困り顔をした。

「山本さん、マネージャーと部員の恋愛は禁止だから。恋愛したら退部なんだよ、わかった」

「退部? 厳しいー……」